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ダライ・ラマ14世 チベットの経済発展に一定の評価

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(2006年11月11日 FujiSankei Business i. )

来日中のチベット仏教の指導者、ダライ・ラマ14世はこのほど、広島市内で記者会見し、今年7月に青蔵鉄道が開通し、チベット自治区のラサと上海、北京など大都市を結ぶことで、「チベットの経済発展が促進される」と述べて、同自治区の経済開発に一定の評価をみせた。また、ダライ・ラマは歴代の中国共産党指導者の中でも、トウ小平氏について触れ、「中国の改革・開放を推進し、現在の経済繁栄の基礎を築いた」などと語り、その経済運営の手腕を高く評価した。ダライ・ラマが中国の経済発展を肯定的に評価するのは異例。

ダライ・ラマは青蔵鉄道の建設によって、「環境や生態系の破壊に通じる」などとして、「慎重な開発が必要」との見方を示したものの、「レストランや店舗が多数、建設され、チベットも経済的に豊かになっていくのは悪いことではない」と指摘した。

しかし、その一方で、同自治区内の政治的な環境が厳しくなっていると主張。ダライ・ラマが独自に入手した情報では、「チベット仏教の僧や尼僧が強制的に政治学習を強いられているほか、報道の自由も厳しく抑制されている」ことを明らかにした。

また、あるチベット人が喫茶店で「鉄道が開通して、漢族(中国人)が多数流入すれば大変なことになる」などと話していただけで、外に出たらすぐに身柄を拘束された例があるという。

ダライ・ラマは「このような人権抑圧をやめさせるためにも、チベット人が経済や宗教、文化、教育を管轄するという一定の自治が必要だ」との持論を力説した。

ダライ・ラマはチベットの経済、政治状況に関連して、1949年の新中国建国後の時代を4つに分け、その時々の最高指導者について論評した。

まず、毛沢東主席について、「イデオロギーの時代であり、政治的な運動が激しい時期だった」と述べた。次のトウ小平氏については「改革・開放路線を推進し、現在の経済繁栄の基礎を築いた。国民の所得も飛躍的に増えて、中産階級が1億5000万人に達するなど、極めて発展のスピードが高い時期だった」と高く評価した。

江沢民時代は「資本階級を共産党に入れるなど、トウ小平時代に続いて、経済発展を軌道に乗せた」と主張。

現在の胡錦濤政権については「かつての孤立的な態度はすっかり変わった。中国国民はより国際社会に加わろうとしているし、政府も法治国家の確立に向けて努力している。草の根レベルでは民主的な動きも見られる」と前置きして、「経済発展も著しいほか、政治的にも変革の過程にある」と述べて、今後のダライ・ラマ側と中国政府との交渉にもよい影響が出ることに強い期待感を込めた。

ダライ・ラマが中国経済について一定の評価を加えたことについて、在京チベット関係者は「ダライ・ラマは頻繁に海外を訪問し、さまざまな国々の経済の発展ぶりをじかに見ており、中国経済も客観的に評価できるのではないか」と指摘している。